研究概要 |
M.penetransは、M.peneumoniae,M.genitaliunと近縁種で1)HIV感染者中のhomosexua1経路での感染、2)抗フォスフォリピッド症候群(APLS)との疫学的関連が示唆されているマイコプラズマ種で、ヒト上皮細胞への侵入能を有する。HIV感染者における感染経路としては、患者尿路上皮への侵入、尿からの分離により系泌尿器感染が推測されている。一方、非免疫不全者における原発性M.penetrans感染症であるAPLSにおけるM.penetrans感染経路は不明である。本研究に用いた株は、呼吸器症状を伴う重篤な病状に陥り、血液および気道からM.penetransが分離され、その後、抗マイコプラズマ抗生物質治療により劇的に病状改善が見られたメキシコのAPLS患者(EID,1999,5:164-167)の気道より分離されたHF-2株である。 1,細胞侵入アッセイ系の確率にはHF-2株をサルの気管リングヘ感染させ、経時的に電子顕微鏡にて上皮細胞内へ侵入するM.penetransを観察した。HF-2株は感染後6時間で気管上皮へ侵入した。コロニーへの赤血球吸着アッセイを確率した。 ヒト気管支由来細胞株ならびにHela細胞への侵入菌を共焦点顕微鏡にて観察した。 2,細胞非侵入株は得られなかった。理由としては、1)トランスポゾン等の分子生物学的ツールが存在しない為(Tn916,Tn4001,改良型Tn4001のいずれもTransformantは回収できなかった、2)UV照射による変異株作成は可能であったが、赤血球吸着能を欠くクローンが継代中に消失したこと、がある。そこで抗体作成によるストラテジーに変更した。 3,HF-2株のプロテオームと、菌コロニーへの赤血球吸着阻害活性(IHA)を有する抗HF-2株抗体とを二次元Western Blotting法で反応させ、抗体で認識されたタンパク各スポットを再度二次元泳動ゲルより切り出し、マウスに免疫し抗体を得た。現在、IHAを誘導する抗原の同定を進めている。 本年度は、分子生物学的ツールの欠乏により、研究計画の約80%程度の達成であった。細胞吸着関連蛋白の候補を今後、絞り込み、最終的に細胞侵入への関与を証明する必要が生じた。
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