C型肝炎HCV-1bJk株及びM094AJk株由来NS5AならびにISDR配列部分のみM094AJk株由来のキメラNS5A発現細胞を用いて、NS5AがIFNの抗ウイルス活性を部分的に抑制すること、及びその抑制の程度はISDR配列により異なることを明らかにした。また、チャレンジウイルスとして脳心筋炎ウイルスを用いた場合、水疱性口内炎ウイルスを用いた場合よりも抗ウイルス活性の抑制の程度が大きく、NS5AはIFN抗ウイルス活性のシグナル伝達経路のうち、2-5A合成酵素/RNase L経路にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。そこで、NS5Aが阻害するIFN抗ウイルス活性経路を明らかにするために、上記NS5AとIFN抗ウイルス活性のシグナル伝達分子(2-5A合成酵素、RNAse LまたはPKR)を二重発現する細胞株の樹立を試みた。しかし、得られた細胞株においてはNS5Aの発現量が少なくこの細胞を用いた系からの解明は難しいと判断した。PKR経路に関しては、NS5AがPKRと結合することで機能を阻害しているという報告がある。一方、チャレンジウイルスの種類により抗ウイルス活性の抑制の程度に差が認められたことから、NS5Aは2-5A合成酵素あるいはRNase Lとも結合し、抗ウイルス活性を抑制するのではないかと考えられた。現在、GST融合NS5Aならびに2-5A合成酵素を大腸菌で発現させ、in vitro転写翻訳システムあるいは培養細胞内で発現させた2-5A合成酵素あるいはNS5Aを用いて、GST pull down assayにより両蛋白の結合を解析中である。なお、培養細胞内で両蛋白を発現させ免疫沈降を行う方法では、両蛋白の結合を確認している。今後、これらの蛋白が直接結合しているのか他の蛋白がこの結合に関与しているのかなど詳細な検討を進める予定である。
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