ロタウイルスは、遺伝子の多様性が知られている。その原因として挙げられる、遺伝子の点変異、分節遺伝子の再集合に次ぐ三番目の変異メカニズムである遺伝子の再編成(リアレンジメント)は、その生成メカニズムがこれまでほとんど明らかにされていなかった。そこで、本研究ではリアレンジメントの様式を明らかにすべく、遺伝子にリアレンジメントを生じた株を集め、その遺伝子配列の解析を試みた。 ロタウイルス標準株の一つであるUK株をhigh m.o.i.でパッセージを続けたところ、新たにNSP2遺伝子に重複を生じた株を分離することが出来た。遺伝子配列の決定を行ったところ、本リアレンジメントの様式としては、唯一のORFの終始コドンの下流から、伸長反応中の鎖を伴ったポリメラーゼが誤って上流にジャンプしてしまい、その後2nd copyの伸長を再度開始したと考えられた。 更にPAGE上では、この他にも通常のUK株の泳動パターンとは泳動度が異なる多数のバンドが得られており、分離と遺伝子の解析を進めている。 また、これとは別に既にNSP1およびNSP3遺伝子に遺伝子重複を生じているヒト由来株を、更にhigh m.o.i.下でパッセージを続けたところ、VP6遺伝子がPAGE上通常の泳動度とは全く異なるバンドに置換されたことが確認された。これまで構造タンパクをコードする遺伝子のリアレンジメントが報告されたのは極めて稀である。さらに、連続パッセージの過程で通常のVP6遺伝子が消滅しリアレンジ遺伝子に置換されたとすると、リアレンジを生じたVP6遺伝子が増殖上何らかのアドヴァンテージを持つことも考えられる。今後解析を続けて行きたい。
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