1.インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼPAサブユニットのプロテアーゼ活性の生化学的解析を行うため、まずPA蛋白の大量発現と精製法を確立した。インフルエンザウイルスA/PR8/34(H1N1)株のRNAポリメラーゼPAサブユニットを発現する組換えバキュロウイルスBacPAを作成し、これをSF21AE昆虫細胞で発現させ、各種カラムクロマトグラフィーを用い、PA蛋白を精製した。精製したPAは450〜500kDaの画分に回収されたことから、PA蛋白は6量体で存在すると推定された。 2.精製したPAを用いてプロテアーゼ活性の測定を行った。PAを数種類の人工ペプチド基質と反応させたところ、pH8.0においてチロシンを特異的に認識し、PA蛋白の濃度に依存した基質Suc-Leu-Leu-Val-Tyr-4-methyl-coumary-7-amideの分解が見られ、また高分子タンパクであるカゼインの分解も認められた。さらにセリンプロテアーゼ特異的阻害剤であるDFPがPAと結合したことから、PAのプロテアーゼ活性はセリンプロテアーゼであると分かった。 3.PAのプロテアーゼ活性部位の同定を行った結果、DFPがPAのアミノ酸C末端側の616番目と624番目のセリン残基に結合していることが分かり、この部位に活性中心が存在することが分かった。さらにどちらのアミノ酸が活性部位であるかを同定するため、この2ヶ所のアミノ酸をトレオニンに置換した変異体、また欠損させた変異体を作成し、各変異体のPA蛋白の精製を行った。現在、それぞれの変異体PAのプロテアーゼ活性を解析しており、詳細な活性部位の同定を行っている。 4.PAの立体構造を解明するために、まず結晶化に必要な5mgのPAを精製した。現在その結晶化に取り組んでいる。
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