E型肝炎ウイルス様粒子(VLP)形成能が報告されているN末端を欠損させたE型肝炎ウイルスORF2(dORF2、ORF2の112番目のアミノ酸以降の548アミノ酸)の71、257、399、434、478番目のアミノ酸残基の後(それぞれサイト1、2、3、4、5)に12アミノ酸よりなるエピトープタグを挿入しバキュロウイルス系により発現した。これらのキメラ蛋白はいずれも昆虫細胞でよい発現が得られたが、上清中に効率良く放出されず、VLPとして回収されたのはサイト4にエピトープタグを挿入したもののみであった。回収できたサイト4にエピトープタグをもつ微量のキメラVLPをマウスに経口ないし腹腔内投与したところ、いずれの場合でも血中にエピトープタグ特異的抗体が誘導された。経口投与では、消化管に特異的分泌抗体の誘導も認められた。最近、VLPを形成するORF2由来蛋白はC末端が52アミノ酸消化されたものであることが報告された。そこで、VLPの収量をあげる目的で、dORF2のC末端を52アミノ酸欠損させ、そのサイト1から4およびN末端もしくはC末端にエピトープタグを挿入した合計6種のキメラ蛋白を発現させた。これらのうち、N末端およびC末端にエピトープタグを挿入した2種類のみが効率良く上清中に放出された。また、これら2種類のキメラ蛋白のうちC末端にエピトープタグを挿入したもののみが、塩化セシウムによる精製でも安定なキメラVLPを形成した。現在、効率良く回収できるようになったC末端にエピトープタグをもつキメラVLPを用いて、その抗体誘導能について検討を行っている。
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