ウイルス感染によって伝達されるシグナル伝達により、転写因子IRF-3はリン酸化され、核へ移行し、特異的なDNA結合能を獲得することによって、I型インターフェロン遺伝子の発現誘導に関与することを明らかにしてきた。本年度は、IRF-3についての種々の変異体を用いた解析により、C末端に存在する二つのセリン残基がIRF-3の活性化に必須であることを明らかにした。また、実際に細胞内においてこれらのセリン残基がリン酸化されていることを確認するため、活性化されたIRF-3を精製、分解し、質量分析計で解析することによりリン酸化部位を特定する実験を行っている。次に、この2つのセリン残基のリン酸化に関わるキナーゼ分子を同定するため、in vitroでのリン酸化反応系の構築を試みた。ウイルスあるいは二重鎖RNAなどで刺激したマウスL929細胞あるいはヒトHeLa細胞から細胞抽出液を調整し、試料とした。基質としては、全長のIRF-3あるいはIRF-3のC末端のみを大腸菌あるいは培養細胞に発現させ、部分的に精製したものを用いた。対照として、上記の2つのセリン残基をアラニン残基に置換した変異型IRF-3を用いている。種々の条件下でのリン酸化反応を検討し、ウイルス感染および2つのセリン残基に特異的なリン酸化反応系の樹立を試みている。一方で、いくつかの既知のキナーゼについて、IRF-3へのリン酸化能について検討したが、これまでのところ特異的なリン酸化は検出できていない。
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