マウスBリンパ球細胞株CH12F3-2の染色体に挿入された状態で、サイトカイン刺激によりクラススイッチ組換えを起こす人工基質を用いて、組換え標的であるS領域の転写と人工基質上での組換え頻度について検討を行った。まず、組換え頻度を迅速かつ正確に定量するため、組換え後にCD8α-GFP融合タンパクを細胞膜に表出する人工基質を開発した。従来の人工基質では組換えによりガンジクロビル耐性を獲得した細胞の頻度を2週間の培養を要する限界希釈法により計測する必要があったが、新人工基質では刺激終了後直ちにFACSにより組換え後の細胞頻度を測定することができる。転写の強度と組換え頻度の関係を解析する目的で、この人工基質にある2つのS領域のうち下流のS領域の転写を司るプロモーターを構成的プロモーターからテトラサイクリン誘導プロモーターに置換したものを作成した。その結果、テトラサイクリン濃度により連続的に変化させることができる転写の強度と、その条件で誘導される組換え頻度とが相関することが判明した(未発表)。このことは転写機構がDNA組換えに直接に関わっていることを示唆する初めての知見である。 クラススイッチ組換えでの必要性が示唆されているスプライシングの関与を検討するため、スプライシング部位に変異を導入し、スプライシングが障害されている人工基質を作製した。この基質でクラススイッチ組換えが誘導されるかどうか、現在検討を進めている。
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