本研究は、脳内における亜鉛の生理的役割をzinc transporterの発現を明らかにすることを目的とし、亜鉛欠乏食を投与したラットにストレスを負荷した時の中枢神経機能に関与している亜鉛の役割を脳内における亜鉛トランスポーターとして機能するZnT-3およびZnT-4の発現から明らかにすることを試みた。実験は、Wistarラットを亜鉛欠乏食投与群(ZD)、ペアフェド群(PF)およびコントロール群(C)に分けて生後4週齢から8週間それぞれの群に異なる試料を与えて飼育した。ストレス負荷は動物をアクリル製の採血ケージ内で1時間拘束をおこなった。血漿と脳組織は8部位に分割して分析まで凍結保存した。脳組織中の亜鉛トランスポーターの分析は、平成11年度に作成したこれらの抗体を用いてウェスタンブロッティング法により比較した。これらの遺伝子発現については、LightCyclerを用いて発現量を定量した。血漿コルチゾールはラジオイムノアッセイにて測定した。この結果、蛋白質レベルでは各群に差は認められなかった。遺伝子の発現量に関しては測定条件の設定に時間がかかっており現在も分析を継続しているたところである。亜鉛欠乏がストレス反応に及ぼす影響については、海馬におけるグルココルチコイド受容体など、ストレスと直接関わっている因子について検討するのが望ましく、本研究ではこれらについても分析を進めている。全ての結果を明らかにするには更に時間を要するが、今年度中には研究結果をまとめる予定である。
|