研究概要 |
中部太平洋のマーシャル諸島では1946年から58年まで60回以上の地上水爆が行われた。この時に生じた放射能の住民に対する健康影響については、アメリカを中心に調査されてきた。我々はその後、独自に全住民の60%以上について甲状腺異常の有無を調査した。その結果残留放射能が多い地域(推定甲状腺線量50-100Gy程度)では甲状腺がんのリスクが約4倍であることを明らかにした。さらに、同地域にヨード欠乏が存在することを確認したため、ヨード欠乏がその直接作用として甲状腺がんの増加をもたらすのみでなく、放射能の甲状腺がん発症の対する影響を修飾する可能性の検討を続けている。 1999年度は、マーシャル諸島住民のヨード欠乏程度を明らかにするために360人の住民について尿を集めて尿中ヨードを測定した。その結果、甲状腺疾患を持つ男性についてはヨード欠乏であるオッズ比約3倍であることがわかった。しかし、一方女性ではこのような傾向はなかった。(Thyroid nodules,thyroid function and dietary iodine in the Marshall Islands International Journal of Epidemiology,28:742-749,1999) さらに、このヨード欠乏が放射線の甲状腺癌発ガン作用あるいは良性腫瘍誘発作用を修飾するかどうかをケースコントロールのデザインで検討する。乗法モデルを適用して放射線とヨード欠乏の交互作用を検討することから明らかにする。
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