多重リスク症候群の遺伝的背景を推察する目的で、東京大学教育学部附属学校を卒業した成人双生児約1200名を対象に生活習慣および生活習慣病の既往に関する質問紙調査(1次調査)を実施した。これは同校の協力による。 2000年2月末の時点で420名から回答を得ている。このうちペアで回答が得られたものは、一卵性双生児135組(男男35組、女女100組)、二卵性双生児25組(男男4組、女女10組、異性11組)であった。生活習慣病に関する一卵性双生児の発端者一致率は、高血圧で0.615、高血糖で0.375、高脂血症で0.787、肥満傾向で0.580であった。同性二卵性では順に、0.000、0.333、0.667、0.333であった。性・年齢を調整した血縁関係のないランダムなペアでは全ての一致率が0に近いものであった。従って、個々の疾患に関して素因が関与する事は従来の知見通りである。 睡眠時間・心理的ストレス・食習慣(規則正さ・間食など)・運動習慣・飲酒・喫煙習慣などとの関連においては、悪い生活習慣が増加するほど個々の生活習慣病の発症リスクは増加すると考えられた。疾患の併発に関するクロス相関の一致率に顕著な卵性差は今のところ見い出されていない。従って、仮にシンドロームXの様にこれら複数の疾患が併発する場合でも素因による寄与は必ずしも大きくないかもしれない。 現在、二卵性双生児さらに近親(両親・兄弟姉妹)および配偶者のデータを収集・集計中である。また一方のから回答が得られた組に関する分析を行っている。
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