地域社会においては「寝たきり」の増加が相変わらず指摘されており、その予防対策の必要性は全く減じていない。我々は愛媛県重信町において町内の60〜84歳の住民を対象に高齢者の生活実態についてのベースライン調査を行ってきた。本年度はこのデータと国民健康保険医療費のデータをリンケージして過去の生活習慣が現在の医療費にどのような影響を与えているのかを分析した。1998年現在、重信町の60〜84歳の国保加入者数は3754人であり、そのうちの2943人(78.4%)について上記ベースライン調査のデータをリンケージできた。医療費分析に用いたのは1998年5月診療分と1999年5月診療分の診療報酬明細書であり、個人毎に1998年5月分と1999年5月分の合計の医療費保険点数を入院、入院外、およびその合計別に算出した。医療費保険点数を従属変数、独立変数を上記ベースライン調査の成績として重回帰分析を行うと、入院医療費と関連があったのは、過去1年間の入院経験の有無(入院あり>なし)、飲酒習慣の有無(飲酒習慣なし>あり)、喫煙習慣の有無(喫煙あり>禁煙)であった。入院外医療費と関連があったのは年齢(高齢ほど点数多い)、過去1ヶ月間の通院の有無(通院あり>なし)、過去1年間の入院経験の有無(入院あり>なし)、1km連続歩行(歩行困難・不能>歩行可能)、塩分制限の意識(意識あり>意識なし)、飲酒習慣(飲酒なし>あり)であった。入院・入院外合計医療費と関連があったのは、性別(男>女)、年齢(高齢ほど点数多い)、過去1ヶ月間の通院の有無(通院あり>なし)、過去1年間の入院経験の有無(入院あり>なし)、1km連続歩行(歩行困難・不能>歩行可能)、飲酒習慣(習慣なし>あり)、喫煙習慣の有無(喫煙あり>禁煙)、健康診断受診の有無(受診なし>あり)であった。
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