本研究は1997年1月から1998年12月までの2年間に死亡した大分市住民(25〜74歳)の内、国際疾病分類題10回修正(ICD-10)に基づき、原死因が心疾患あるいは虚血性心疾患と関連のある疾患を抽出し、医療記録あるいは医師へのインタビューを基に死亡診断の妥当性を検討することにより、死亡統計にみられる虚血性心疾患の動向のより正確な把握を試みることを目的に実施している。 本研究での調査対象者の抽出に際しては、磁気テープの使用、あるいは死亡例を同定するための死亡小票の閲覧を必要とするため、本年度は総務庁に対し指定統計調査調査票使用申請書を提出した。今後、本申請の許可に基づき調査の実施を行っていく。本年度はさらに、本調査で用いられる調査票の作成とデータを入力するためのデータベースの構築を行うとともに、これまでの文献等の成績を合わせ最近の虚血性心疾患の動向についての知見を整理した。 近年のわが国における虚血性心疾患の動向は年齢調整死亡率で見ると減少してきたが、ICD-10の改正にともない1995年には一旦増加した。この増加の要因には、従来頻繁に用いられてきた心不全の急激な減少が関連していると考えられいる。神奈川県での都市部での成績では、急性心筋梗塞の死亡率と循環器科病院の地理的な関連から、虚血性心疾患の死亡率の分布に医療供給体制が関わっていることが示唆された。また、都市部においての虚血性心疾患の動向については、特に急性心筋梗塞の治療として経皮的冠動脈形成術等の実施数を考慮すれば、従来よりもその発症率は増加している可能性が示唆され、血清総コレステロール等の冠危険因子の動向と合わせてわが国での虚血性心疾患の動向にはより注意を払うべきであることが示された。
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