1995年1月から採用された国際疾病、傷害および死因統計分類第10回修正(ICD-10)に基づく死亡診断書改正後において、虚血性心疾患死亡統計が大きく変化したことを背景に、その妥当性を検討した。 大分市において、1997年1月から1998年12月までの2年間に死亡した25-74歳の住民のうち(人口27.3万人)、ICD-10に基づき、原死因が心疾患あるいは虚血性心疾患との関連のある疾患とする342例を全数抽出した。未調査15例を除いた327例(95.6%)について、医師の面接聞き取り、あるいは医療記録の悉皆的な調査から、国際共同研究であるMONICA研究の診断基準に準じ、原死因を急性心筋梗塞・確実、可能性、急性死、非虚血性心疾患死亡、不明の5区分に再分類した。 342例中、心疾患死亡を原死因とするものが273例(内訳:急性心筋梗塞143例(52.4%)、その他の虚血性心疾患27例(9.9%)、心不全52例(19.0%)、他の心疾患51例(18.7%))、心疾患以外のものが69例であった。医療記録等の調査をもとに、MONICA研究の診断基準に基づき、急性心筋梗塞・確実23例、可能性73例が再分類された。急性心筋梗塞・確実と可能性を真の虚血性心疾患とした場合、総数での虚血性心疾患に対する死亡診断の感度、陽性反応適中度、特異度、陰性反応適中度はそれぞれ86.5%(95%信頼区間:77.6-92.3)、50.6%(42.7-58.5)、64.9%(58.4-71.0)、92.0%(86.5-95.5)であった。これらの指標を性別、死亡年齢別、そして死亡場所別に比較したところ、25-54歳の群での陽性反応適中度の低下と、病院外死亡における陽性反応適中度および特異度の有意な低下を認めた。 大分市において、ICD-10への改正後、虚血性心疾患に対する死亡診断の妥当性を検討したところ偽陽性例の増加により陽性反応適中度と特異度が低下した。そして、25-54歳での死亡、または病院外死亡であることが偽陽性例を増加させる要因として関連していた。改正後の虚血性心疾患死亡数の大幅な増加は、これまでに多用されてきた心不全にかわり、虚血性心疾患という死亡診断名が多用される傾向が強くなったことによるものと考えられた。
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