研究概要 |
変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:以下Knee OA)は、高齢者において有病率が極めて高い疾患と考えられているにもかかわらず、本疾患に関する疫学的アプローチは少なく、年間発生数や発症要因について確証は得られていない。今回、Knee OAの発症要因を明らかにし、本疾患の発症要因に日英で差がみられるかどうかを検討することを目的として、日英両国で同様の手法を用いてcase control studyを実施している。今回は、2年間の計画の1年目として、現在までの進捗状況について述べる。 本調査は、英国の2つのhealth district(Portsmouth,North Staffordshire)において実施され、日本では和歌山県二地域(和歌山市、有田市)、及び大阪府泉南市において進行中である。caseの定義は、調査の1年以内に対象病院を初診した45歳以上の男女で、整形外科医によりKnee OAと診断され、かつ調査期間中に手術(total knee arthroplasty,osteotomy,patellar replacement)の適応と診断されているものとした。controlは1caseにつき1人とした。caseと性、年齢(±2歳)をあわせ、caseの住所における住民台帳よりランダムに抽出した。調査はcase,controlとも同一の調査者が訪問し、本人の承諾をとった後に、対面聞き取り調査を行った。本調査における調査票は二国間で開発された物で、調査項目は職業、移動手段、スポーツ、趣味、たばことアルコールの摂取頻度、関節障害の有無、運動障害の有無、既往歴、月経状況など約60項目である。現在約50ペアが調査終了している。その結果をみると、BMI、指、肩関節のこわばりなどでオッズ比が有意となっており、体重が重いことや他関節の障害がKnee OAの発症要因となることが示唆された。今後さらに調査を続け、最終的には日英間の発症要因の比較を行う予定である。
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