スギ花粉症の有病率を明らかにし、発症の増悪要因や背景となる素因を解明する目的で、全国10府県において3歳児健康診査受診者の両親を対象に調査を行った。結果として、「くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3症状すべてあり、かつ症状が2月から5月のいずれかの月で出現する」と答えた者を本研究で「スギ花粉症あり」と定義し有病率を求めたところ、男4.8%、女6.5%で、すべての府県で、女が男より高かった。また、年齢階級別には30〜34歳で最も高かった。花粉飛散量の多い関東、東海地域が有病率が高く、少ない地域では低い傾向が見られた。発症と、環境要因や遺伝要因など危険因子の解明を行うため上記の定義を用いて症例対照研究を行った結果、遺伝素因としての家族歴のオッズ比は、有意な関連が観察されたアレルギー疾患が多かった。また、環境要因については、花粉飛散量を考慮して解析するため、一つの県に注目して発症との関係を観察した結果、単変量解析では居住地(住宅/農山村)、住居様式(集合住宅/一戸建て)、住居のつくり(鉄筋コンクリート/木造・モルタル)、交通量の多い道路までの距離(100m未満/100m以上)が男女ともに1より高くこれらの因子を説明変数として多重ロジスティック解析を行った結果、統計学的有意差が認められたのは男における交通量の多い道路までの距離であった。女について本人かつ実の両親のいずれかにアレルギー疾患があるグループ(遺伝素因あり)と、本人も実の両親もアレルギー疾患なしのグループ(遺伝素因なし)で環境要因の及ぼす影響の大きさを上記の因子を説明変数として多重ロジスティックモデルで解析したところ確定には至らないが、遺伝素因のあるグループの方がないグループに比べてすべての項目でオッズ比が大きく、環境要因のリスクを上昇させる傾向が得られた。
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