研究概要 |
糖尿病患者における下肢切断の危険因子,特に生活習慣における危険因子と,下肢切断後の予後を明らかにすることが本研究の目的である. 本年度は,下肢切断症例の把握と予後調査ならびに危険因子同定のための症例対照研究のための対照群の選択を行った.1988年から1997年までの10年間に東京慈恵会医科大学本院(東京都港区),柏病院(柏市)及び第3病院(狛江市)の整形外科あるいは形成外科にて初回の下肢切断を施行された患者は,44例(男性/女性=33/11)であった.下肢切断時の年齢は,63.8±11.0歳(平均±標準偏差),糖尿病罹病期間14.9±12.4年,切断後の平均追跡期間は,22.9±20.9月であった.下肢切断のレベルは股関節1例,太腿5例,下腿10例,サイム切断2例,中足骨6例,足趾12例と,大切断と小切断が約半数づつを占めた.また左側19例,右側18例,両側切断は2例で,左右差は認められなかった. 下肢切断後の生命予後を生命表分析により検討したところ,累積での死亡率は切断後6ヵ月,1年,そして2年でそれぞれ12%,16%,26%となった.すなわち糖尿病患者では,下肢切断後1年で6人に1人,2年後には4人に1人の割合で死亡してしまうことになる.死亡11例の死因の内訳は,脳血管障害2例,感染症3例,悪性腫瘍1例,腎不全1例,その他もしくは不明4例であった.また切断後の累積再切断率は,6ヵ月,1年,2年でそれぞれ28%,32%,43%となり,いずれも下肢切断後の予後はきわめて悪いことが明らかになった.次年度は予後不良となる危険因子を同定するために症例対照研究を行う予定である.
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