11年度で糖尿病自然発症ラットのインスリン抵抗性に及ぼす鍼通電刺激の急性効果についてHyperinsulinemic Euglycemic Clamp法により検討したところ、NIDDM自然発症ラットであるOLETFでは背部ピンチ刺激によってインスリン抵抗性の指標であるGIR(Glucose Infusion Rate)は有意に減少した。一方対照群であるLETOラットでは背部ピンチ刺激後にGIRの有意な増加を認め、耳介部迷走神経鍼通電刺激後に有意な減少を認めた。以上の急性実験により、鍼通電刺激およびピンチ刺激はインスリン感受性を変化させることが明らかとなった。この結果を受けて、12年度は、長期にわたる継続的な鍼通電刺激がOLETFラットのインスリン抵抗性に与える効果について検討した。方法は、5週令の雄性OLETFラット32匹を、無刺激群、背部鍼通電刺激群、耳介迷走神経領域鍼通電刺激群、耳介非迷走神経鍼通電刺激群の4群に分類し、各ラットに15分間の鍼通電刺激を週1回の割合で6週齢から24週齢までの18週間与えた。結果、刺激期間中の体重、摂食量、糞量及び空腹時血糖値の変動には各群で差異を認めなかったが、GIRについては18週間の刺激を終了した時点で無刺激群に比較して他の群では高い値を示し、特に耳介迷走神経鍼通電刺激群と背部鍼通電刺激群では有意に増加していた。このことから、OLETFラットにおいて鍼通電刺激がインスリン感受性の低下の予防に有用であることが示唆された。またこの現象は、体重などに差異を認めなかったことから二次的なインスリン感受性の変化でなく、末梢組織におけるインスリン抵抗性に直接影響した結果と考えられた。
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