我々はヒト血液中の極微量ダイオキシン分析法を確立し、人体汚染レベルが既に世界的に高水準に達しており、特に、焼却場周辺地域の住民は重度に汚染を受けていることを明らかにしてきた。本研究では、ダイオキシン人体負荷軽減化法の開発を目的として、動物実験において明らかにされてきた食物繊維や葉緑素誘導体などが有するダイオキシン類排泄促進効果をヒトに適用することを試みた。まず、既に、健康食品として市販されており、実験動物においてダイオキシンを効率よく排泄した食物繊維のキトサンについて検討した。このキトサンを日常15g程度2年間以上摂取している大阪在住50歳代の男性2名および女性1名の血液を採取し、血液中ダイオキシン濃度を測定した。その結果、被験者男女3名の血中濃度は日本人の平均レベルに比べ6〜8割程度の低濃度であり、汚染が比較的低度でキトサンの摂取により人体負荷が軽減されている可能性あると考えられた。しかしながら、排泄効果は不十分であると判断し、より強力な排泄促進物質の開発を行った。排泄促物質の開発はキトサンを基本に行ったところ、高分子かつ不溶性であることがダイオキシンの排泄に有効であることが明らかとなった。そこで、食物繊維と同様に排泄促進能が有する葉緑素誘導体の水溶性クロロフィリンを高分子キトサンに結合させ不溶性とすることに成功した。この不溶性高分子結合体をマウスに摂取させたところ、キトサンおよびクロロフィリンを結合体と同比率での混合したものおよび、それぞれ単独の摂取群に比べ、高分子結合体摂取群はダイオキシン糞中排泄率が増加しており、ダイオキシンの排泄能が増強した新規排泄物質が得られた。
|