風疹ウイルス感染症の疫学調査は、血清を材料にして行われているが、採血は傷みや不快感を伴うために、一般健常集団の調査、特に小児や老人を対象とした調査では困難なことが多い。尿は、採取が容易で、採取料も多いことから、疫学調査において多くの情報が得られる可能性がある。本研究では、1)尿を材料とした風疹抗体測定法を確立し、風疹予防接種後及び初感染例の尿中抗体を測定し、疫学的有用性を検討する。2)3歳6ヶ月健診児の尿を材料とした風疹抗体保有状況、児の予防接種歴と風疹罹患歴等との関連を分析し疫学調査への応用を検討することを目的とした。 1)については、昨年度実績報告書において、尿中風疹IgG特異抗体測定の感度、特異度は、98.9%、95.8%、初感染例において、尿中でのIgG特異抗体が回復期に上昇することを示した。 2)については、(1)1999年度調査(1999年10月〜12月の3ヶ月間)、(2)2000年度調査(2001年1月-3月の3ヶ月間)を、神奈川県小田原保健センターの協力の下に実施した。調査は、3歳6ヶ月健診児の尿(残尿)、保護者による児の予防接種歴と風疹罹患歴等のアンケート調査で、保護者の同意を得たものについて分析を行った。1999年度調査では3歳6ヶ月健診児(411名)のうち、保護者の同意を得た幼児は376名(実施率91.5%)であった。この内、尿中風疹抗体保有率は78.7%、母子健康手帳で確認した児(355名)の風疹予防接種率は79.7%であった。風疹予防接種を受けていない70名のうち、風疹抗体が陽性であったものは7名で、推定自然感染率は10%であった。また、保育園等に通園している児の抗体保有率(32名、15.6%)は通園していない児(38名、5.3%)に比して高く自然感染が多かった。 (まとめ)尿を材料とすることで、採血に伴う不利益がなく、幼児を対象とした風疹抗体保有調査が可能と思われ、地域における風疹の罹患、予防接種、流行動向等に関する疫学調査に有用であると考える。 2000年度調査は、保健センターの都合により1999年度調査と同時期の実施ができず、現在分析中である。
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