研究概要 |
介護保険制度が実施され、市町村別に運営されて1年が経過し、地域特性を勘案した介護サービスの需給予測やこれらの予測に基づく市町村におけるマネジメントの必要性が一層、痛感されているところである。 さて、昨年度の研究では、介護サービス需給予測については、その個々の地域特性別の詳細な分析が必要であることが示された。このことを受け、本年度は、高齢化率が25.9%を超えた人口約27,000万人の過疎農村地域であるA市を調査対象とし、(1)介護保険制度実施前後の高齢者の要介護度の分布傾向(2)介護サービスの実施内容の変化(3)要介護度が高くなる(介護量が増加)介護保険給付者の予測に関する分析を行なった。 この結果、実施前と実施後の要介護度は、実施後の要介護度のほうが若干、高くなる傾向がみられたが、介護サービスの実施内容には、明らかな変化はなかった。また、要介護度が高くなる群を予測する変数は、「起き上がり」、「ボタンのかけはずし」、「薬の内服」、「短期記憶」、「作話」の5つであり、これらを用いた予測の正確度は71.7%と高い値を示しており、これら5項目と高齢者の状態の変化との関係が新たに示された。 同時に、A市のすべての介護保険給付者個々に「どのような介護」が「どのくらい必要か」という介護サービス量の算出を行うために介護サービス量予測システムを開発し、この資料を用いた介護サービス計画を作成するというモデル事業を試行した。この試行は、これまで標準的な介護サービスの量や質という指針が示されておらず、介護サービス計画の作成に苦慮していた現場の介護保険関係者にきわめて有益であったことが報告された。 今後は、このシステムを汎用化し、より多くの地域で用いることができるように検討したいと考えている。
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