研究概要 |
昨年度の実験では、神経ペプチドY(NPY)の視床下部での発現がエタノール(EtOH)投与により低下することを明らかにした。NPYはセロトニン(5-HT)との関連が報告されているが、5-HT受容体の発現については明確な結果が得られなかった。そこで、今年度は新しく作成した5-HT1Aおよび5-HT4受容体のプローブを用いて、エタノールの1回投与、間欠的投与、連続投与のそれぞれの場合の海馬における5-HT受容体の発現についてin situハイブリダイゼーションにて検討した。 EtOH投与後4時間で試料を採取した急性投与実験において、海馬での5-HT1Aおよび5-HT4受容体の発現に有意な変化を認めなかったことから、EtOHおよびアセトアルデヒド(AcH)の急性作用に5-HT受容体の発現変化が関与している可能性は低いと考えられる。 シアナマイド(CY:アルデヒド脱水素酵素阻害剤)およびEtOHを1日1回、5日間投与した間欠投与実験では、EtOH,CYを単独および併用投与した群とも血中コルチコステロン(CORT)濃度は有意に上昇した。5-HT1A mRNA発現はCY単独群、EtOH単独群およびEtOH+CY群でコントロールに比較してそれぞれ有意に減少した。5-HT4mRNA発現はEtOH+CY群において有意に増加した。これらのことからEtOHの代謝物AcHも5-HT受容体の変化に関与していることが示唆される。 EtOHを1日3回、5日間胃内投与した連続投与実験では、EtOH投与群でCORT濃度が有意に上昇した。5-HT1AmRNA発現は有意に減少し、5-HT4mRNA発現は有意な変化を認めなかった。これまでの報告なども勘案すると、CORT濃度が比較的長期間高濃度を持続することにより5-HT1A受容体の発現抑制が生じている可能性が示唆され、今後さらに検討を進める予定である。
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