法医解剖例におけるアルツハイマー病(AD)の病理的特徴を調べるために、老人の事故死で生前に痴呆症状が有った7症例(AD群)と無かった7症例(非AD群)について大脳新皮質のアルツハイマー型変化を組織学的に比較し、またADと関係しているアポリポプロテインE遺伝子型を調べた。 鍍銀染色と免疫染色では、大脳新皮質のアルツハイマー型変化はAD群で有意に増加していた。また、AD群7症例中4例が既存のAD診断基準を満たし、非AD群は1例も満たさなかった。しかし、AD群3例と非AD群2例では同程度のアルツハイマー型変化が観察され、法医解剖例のAD診断にはアルツハイマー型変化以外の変化を指標にする必要が示唆された。なお、ADの危険遺伝子とされているアポリポプロテインE4遺伝子の出現頻度はAD群と非AD群の間で特別な差は認められなかった。 今後は脳組織標本のアポリポプロテインE免疫染色を行い、アポリポプロテインE沈着量、アルツハイマー型変化および頭部外傷の既往の関係を調べ、ADと頭部外傷の関係を明らかにしたい。
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