Rh蛋白に担われているRh血液型システムは、輸血領域における主要アロ抗原として、また法医学・人類遺伝学領域における個人識別などの遺伝マーカーとして広く利用されているが、その機能は未だに解明されていない。我々のグループはRh蛋白複合体の生物学的機能を明らかにするために、Rh変異型遺伝子の分子遺伝学的解析ならびにRh抗原欠失マウス作成へ向けたマウスRh複合体関連遺伝子の同定と構造解析を行った。 (1)Rh変異型遺伝子の分子遺伝学的解析 RhD抗原の変異型であるpartial Dvaカテゴリーに属する3種類の新たな遺伝子変異を見出し、Dva表現型の細分類を可能にした。また、この解析を通してDva表現型を特徴づけるRh23抗原エピトープがRhD蛋白の233番目のグルタミンに大きく依存していることが明らかになった。 (2)マウスRh複合体関連遺伝子の同定と構造解析 マウスゲノムBACライブラリーより、rhag遺伝子ゲノムクローンを単離した。このクローンをもとにrhag遺伝子の構造解析を行った。また、ヒトRHAG遺伝子の5'上流域にエンハンサー領域を同定し、rhag遺伝子の上流配列と比較することによって、保存性の高いDNAモチーフを明らかにすることができ、エンハンサー配列における機能ドメインの同定に寄与した。
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