アレルギー疾患では、抗原提示細胞を介して活性化されるCD4陽性T細胞の免疫応答が重要な役割を担っており、これらの細胞が産生するサイトカインの生物学的活性が病態に深く関与している。したがって、免疫細胞のサイトカイン産生を観察することは、免疫応答を観察する上で重要であるが、その他の機能も同時にとらえることができれば、免疫細胞の機能をよりダイナミックに観察することができる。 本研究では、アレルギー疾患の成立機序および病態の解明、さらには診断への応用を目的に、申請者らが確立したフローサイトメトリー(FCM)による細胞内サイトカイン検出法をさらに改良し、免疫細胞の多元的な新しい機能解析法の確立を試みた。申請者らが現在用いているFCM装置では、同時に5種類の異なる色素が検出可能である。この機能を最大限に利用して、細胞内サイトカイン染色に、蛍光被貪食物質(蛍光染色マイクロビーズなど)の貪食能試験など、5種類までの多元的なパラメーターを組み合わせることで、マクロファージやT細胞の異なる機能を一つの画像として観察した。具体例としては、未分離の単核球細胞群に刺激因子を添加し、単球の貪食とサイトカイン産生を同時に観察した。これは表面抗原との多重染色により、単核球細胞群を分離精製することなく、コンピューター画面上で単球のみの機能を観察することができた。さらに、BrdU染色と組み合わせることで、貪食とアポトーシスの関係も同時に観察することができた。 このように、FCMを用いることで、免疫細胞の異なる機能を同時に、しかも単細胞のレベルで観察することができるようになった。このことにより、これまで細胞集団の機能として間接的にしか示せなかったサイトカイン産生と貪食の関係や貪食とアポトーシスの関係を直接的に一画像上に示すことができるようになった。
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