全身性硬化症(強皮症)ではトポイソメラーゼI(トポI)やRNAポリメラーゼなど生命活動に必須な酵素に対する自己抗体が検出される。これまでの研究成果により、抗トポI抗体産生は正常に存在するトポIを認識する自己反応性T細胞の活性化によることが示された。トポI反応性T細胞は正常では発現されないcrypticペプチドを認識することから、強皮症患者ではトポIのcrypticペプチドが発現されている可能性が高い。自己抗原のcrypticペプチドを発現させる機序として、自己抗原の修飾や外来蛋白との複合体形成などが報告されている。今年度は強皮症の病態の中心である線維芽細胞におけるトポIの過剰発現および修飾の可能性について検討した。強皮症病変および健常皮膚より採取した線維芽細胞、健常人皮膚線維芽細胞を用いて、RT-PCRによりトポI mRNAの発現量を比較した。トポImRNAは強皮症病変部位線維芽細胞で健常部位に比べて上昇していたが、β-actin mRNAの発現量には差はなかった。免疫ブロット法によりヒト培養細胞株と強皮症および健常人線維芽細胞株のトポIの分子量を調べると、肺癌細胞株A431と強皮症病変部位線維芽細胞で他に比べて分子量の大きいトポIの発現を認めた。これら細胞株のトポI mRNAの塩基配列は同一で、alternative splicingは考えづらかった。32P標識した培養細胞株のトポIの解析により、分子量の大きいトポIでは過剰のリン酸化が起こっている可能性が示された。平成12年度は、強皮症病変部位の線維芽細胞におけるトポIの翻訳後修飾の解析を進めると共に、この修飾により自己免疫応答を誘導するcrypticペプチドが発現されるかを検討する。
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