慢性アトピー患者では、血中IgE上昇に伴うFcεRIの発現上昇が知られている。我々は、アトピー慢性化機構の解明の第一歩として、IgE、FcεRIの関係を我々の樹立した抗TNP-IgEトランスジェニックマウスを用いて解析した。このIgEトランスジェニックマウスはIgEを血清中に30〜50μg/mlと通常マウスの数百倍産生していた。IgEトランスジェニックマウスでのマスト細胞上のFcεRI数を解析すると通常マウスの5倍、IgEの全くないB細胞欠損マウス(μm-/-)の30倍も上昇していた。次にIgEの結合しているFcεRIの割合を求めると、通常マウスでも90%近いFcεRIがポリクローナルなIgEによって覆われていた。一方、IgEトランスジェニックマウスではほぼ100%のFcεRIがIgEで覆われていた。この高IgEによるFcεRIの発現上昇が速やかに起こるかをB細胞欠損マウス及び通常マウスに1度だけ300μgのIgEを注射し確かめた。正常マウスでは3日後に2倍、B細胞欠損マウスでは16倍のFcεRI上昇が認められた。 このIgEによるFcεRIの発現上昇の生理的な意味を知るために通常マウスとIgEトランスジェニックマウスを抗IgE抗体を注射することで全身性のアナフィラキシー反応誘導した。しかしながら、最大反応に関する限り両者に差は認められなかった。現在、FcεRIの発現上昇に伴うFcεRIを介するシグナルの感受性の亢進が認められるか検討中である。また、FcεしたたRIの発現上昇も機構もIgEによるFcεRIの安定化という視点に立ってマウス腹腔マスト細胞を使用することで解明している最中である(論文準備中)。 IgEによるFcεRIの発現上昇は臨床的にも多く認められその機構、生理的な意味を知ることはアレルギーの慢性化、増悪化の解明にも繋がると考えられIgEトランスジェニックマウスを使用することでその詳細を解明していくことにしている。
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