アレルギー疾患の1つの困難性はその慢性化にある。その慢性化過程を理解するため本研究では、高IgE血症ということに着目して解析した。手段としては、私達が樹立した化学物質ハプテンTNP(trinitrophenol)と卵白アルブミン(OVA:ovalbumin)に対するIgEのトランスジェニックマウスを用いた。2つのトランスジェニックマウスともに30〜50μg/mlのIgEを血中に産生し抗原の静注により全身性のアナフィラキシー反応を示した。また、トランスジェニックマウスでは高IgE血症に伴うIgEの高親和性レセプターFcεRIの発現上昇が見られた。マスト細胞の抗原に対する反応性はFcεRIの発現上昇とともに増加することが報告され、このIgE依存性FcεRIの発現上昇の機構の理解はアレルギー患者の病態、さらに治療に重要と考えられている。細胞膜表面のFcεRIの半減期を調べたところ、IgEの結合していないFcεRIは速やかに消失するのに対し、IgEの結合しているFcεRIは細胞膜表面で安定していることが判明した。IgEがFcεRIに結合することでFcεRIを安定すると考えられる。 さらに、私たちが樹立した2つのIgEトランスジェニックマウスを皮膚炎及び喘息の疾患モデルとして確立した。TNP・IgEトランスジゥニックマウスでは皮膚への抗原感作によりアレルギー性浮腫が即時相、遅発相に加え非常に強い第3相が数日後に観察された。この反応が慢性化にともないどのようになるか検討しているところである。また、OVA・IgEトランスジェニックマウスではT細胞が免疫されていなくともOVAの3日間連続の暴露だけで喘息の即時相を誘発することができた。喘息におけるIgE依存姓のアレルギー反応を解析する上でよい系と考えられる。
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