胆汁酸は肝細胞で合成、抱合され胆汁中に分泌される。胆汁は胆管で水分で電解質の調整を受け、十二指腸に排出される。その後、胆汁酸は小腸内で脂溶性植物の可溶化と消化に関わり、そのほとんどが回腸で能動的に再吸収される。回腸上皮細胞における胆汁酸の吸収には、管腔側に存在するトランスポーター(apical sodium-dependent bile acid transporter;ASBT)と細胞質内における胆汁酸運搬タンパク質(bile acid binding protein;BABP)が重要な役割を果たしている。近年、このASBTが肝内胆管細胞にも発現していることが報告されたが、その意義は不明である。本研究では、不死化したマウス肝内胆管細胞(以下、胆管細胞)を用い、胆汁酸はRlラベルのタウロコール酸を用いた。透過膜上でこの胆管細胞を単層に培養し、管腔側および基底膜側から対側への移送とそれらに影響を与える因子について検討した。[結果]RT-PCRによる検討では、細胞はASBTのmRNAは陽性であったが、BABPのmRNAは認められなかった。胆汁酸の移送能は、管腔側から基底膜側へが、その逆方向に比し約3倍あった。次に、この移送は4℃やNaイオン除去培地のもとでは約40%に抑制された。また、同量のグリココール酸を添加した系では、約60%に抑制され、胆汁酸による競合阻害が確認された。以上から、胆管細胞はBABPは発現していないが、ASBTは発現しており、その特性に従った形で胆汁酸を管腔側から基底膜側へ能動的に移送していると考えられた。
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