研究概要 |
1)Serial Analysis of Gene expression(SAGE): 現在まで、膵疾患を疑い手術摘出例約20例において膵液を採取し、RNA抽出を行い、SAGE法の準備段階にある。 2)膵癌におけるFas ligand発現の検討:膵癌cell line4株(PANC-1,ASPC-1,BxPC-3,MIA PaCa-2)、手術で摘出された膵癌組織19例と正常膵組織5例を材料とし、RT-PCRと免疫染色にてFasLの発現を検討した。さらに、PANC-1とFas/FasLを発現しているヒトT細胞白血病cell line Jurkatをcocultureし、膵癌細胞のFasL発現によるアポトーシスの誘導能力をflow cytometryにて検討した。FastL mRNAの発現は膵癌細胞株4例全例、手術摘出膵癌組織10例全例に認めた。一方、正常組織では、5例中2例に弱い発現を認めたが3例には発現を認めなかった。免疫染色によるFasL蛋白発現は、膵癌19例中16例(強陽性8例、中等度陽性3例、弱陽性5例)に認めたが、正常膵組織では認めなかった。coculture assayでは、Jurkat cellにおいて20%程度のアポトーシスに陥ったと考えられるhypodiploid DNA peakを認めたが、PANC-1においては認めなかった。膵癌細胞は、1)FasLを高頻度に発現している、2)Jurkat cellのアポトーシスを誘導したが、Jurkatによるアポトーシス誘導には耐性であった。このことから、FasLは膵癌細胞の生体免疫機構からの逃避機序に重要な役割を担い、膵癌の進展に関与していることが示唆された。
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