本研究は肝癌発癌の初期過程において、メチル化状態の変化がどのような形で肝癌および肝硬変部で起きているかを明らかにすることを目的とした。またメチル化の変化に伴い肝癌での遺伝子発現にどのような変化が起きているかを解明し、実際にメチル化状態の変化が発癌に関与することを実証することを最終的な目的としている。 本年度の研究では肝癌染色体DNAのRLGS法による詳細な解析とRH panelsによる染色体へのマッピングを、メチル化の変化によるとみられるスポットに注目して進めた。その結果、多くの肝癌で観察されたスポットの変化のいくつかは、実際にCpGアイランドのメチル化の亢進によることを確認し報告した(Hanafusa T.et al.Genome aberrations observed by restriction landmark genome scanning analysis of chromosomal DNA in various types of primary hepatocellular carcinoma.Hepato-Gastroenterology(2000)(in press))。癌部における遺伝子発現の変化はマイクロアレイを用いることにより、多数の遺伝子について迅速に行うことができる。そこでメチル化の変化によると予想される遺伝子のスクリーニングにマイクロアレイ解析を応用し、IGFBP3やRho8などメチル化との関連が予想される候補を同定し報告した(第3回日本肝臓学会大会 平成11年(1999)花房直志他 肝癌遺伝子発現のマイクロアレイによる解析)。マイクロアレイ解析は非常に有効な手法であることが明かとなったが未知遺伝子の検出には用いられないので、当初の予定通りRLCSによる解析の準備を開始し、ほぼ実施可能な手技を確立した。
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