研究概要 |
申請者は、ガラクトサミン肝障害モデルラットを分岐鎖アミノ酸含量の異なるアミノ酸輸液で維持した実験から、アルブミンmRNAに転写後段階における調節機構が存在する可能性を示唆した。すなわち肝障害モデルラットをアミノ酸輸液で維持することで肝臓のアルブミン遺伝子発現量は一応の回復が観察されるが、蛋白質合成の場であるポリゾーム画分へ移行しているアルブミンmRNA量には輸液中の分岐鎖アミノ酸含量に依存した増大が観察された。 本研究では、分岐鎖アミノ酸投与によるアルブミンmRNA翻訳調節機構の詳細な分子機構を解明する事を目的としている。蛋白質合成活性の指標として用いたポリゾームプロファイルには、輸液アミノ酸中の分岐鎖アミノ酸含量による差は観察されていない事から、この調節機構はアルブミンmRNAに選択的なものであると予想され、アルブミンmRNAと肝臓細胞質蛋白質との相互作用について検討を行った。in vitro転写系を用いて合成したアルブミンcRNAをプローブとしたゲルシフトアッセイおよびUVクロスリンキングアッセイの結果、ラット肝臓細胞質画分にはアルブミンmRNA3′非翻訳領域に結合する分子量約40,000の蛋白質が存在する可能性を見い出した。本結合活性は、肝障害モデルラットで顕著に増大し、輸液アミノ酸中の分岐鎖アミノ酸含量に依存して低下していることから、この結合蛋白質がアルブミンmRNAのポリゾーム画分への移行を抑制している可能性が考えられる。現在、ウサギ網状赤血球ライセートを用いた無細胞蛋白質合成系により、本結合蛋白質によるアルブミン翻訳活性への影響をin vitroで検討中である。
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