研究概要 |
胃体部粘膜上皮にある表層粘液細胞と副細胞の調節因子(epidermal growth factor(EGF),hepatocyte growth factor(HGF))による制御機構を解明するため、まず分子生物学的手法にて各粘液細胞における受容体発現を調べ、次にその受容体の機能の有無を胃粘膜器官培養系でムチン生合成を比較することにより以下の結果を得た。 1.ラット胃体部粘膜におけるEGF及びHGF受容体の発現は、RT-PCR法で調べたところ、部位により差が見られた。表層粘液細胞層では両者の受容体の発現が同等に見られたのに対し、副細胞層ではHGF受容体のみが認められ、EGFに対する受容体のmRNAは検出されなかった。 2.独自に開発した表層粘液細胞剥離法で、7週齢ラットより作成した表層粘液細胞のみの組織と副細胞含有組織への^3H-glucosamineおよび^<14>C-threonine取込みをEGF培地内添加で比較したところ、表層粘液細胞における典型的ムチン型糖蛋白質への標識化合物の取込みは濃度依存的に有意な増加を認めたが、副細胞では認めなかった。この表層粘液細胞層には一酸化窒素合成酵素(NOS)の局在が確認されているので、次に、EGFの胃体部ムチン生合成活性亢進作用がNOS阻害薬であるN^G-nitro-L-arginine(L-NNA)の前処理によりどのように変化するか検討したところ、L-NNA濃度を10^<-5>Mまで高めても抑制傾向は認めなかった。また、表層粘液細胞と副細胞のHGFに対するムチン生合成の反応性を検討したところ、いずれの細胞でもムチン生合成亢進作用が確認された。 3.以上より、各粘液細胞はEGFとHGF受容体発現に違いがみられ、異なる制御を受けている可能性が示された。
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