研究概要 |
6週齢のWister系雄性ラット(約200g)にMNNGを100mg/1の濃度で8週、16週にわたり、自由飲水させ、組織計測学的にラットの粘膜萎縮を固有胃腺の高さ、および単位長さ当たりの密度(1mm当たりの固有腺の数)を指標として萎縮の程度を評価した。萎縮性胃炎は経時的に進行したが、その発生はすでに8週後から確認できた。萎縮に伴う分化や増殖を含めた生物学的な変化を検討する目的で、このモデル動物の分化のマーカーであるconnexin32蛋白による免疫組織学染色、増殖のマーカーである坑BrdU,PCNA染色を施行し、また線維芽細胞や血管平滑筋細胞などの間葉系組織に対する増殖因子である繊維芽細胞増殖因子(bFGF)および血小板由来増殖因子(PDGF-BB)の発現も免疫組織学的に検討した。その結果、萎縮の進展にともなう増殖マーカーの発現の亢進、およびconnexin32蛋白発現の減弱を認めた。また、間葉系に対する増殖活性を有するbFGFやPDGF-BBの胃粘膜内発現も亢進しており、胃粘膜全体として増殖活性が亢進していることが明らかとなった。次に、これらの変化の発癌との関連を調べるためにEカドヘリンの発現免疫組織学的に検討した。Eカドヘリンは胃粘膜層全体に均一にしていたものの、これまでの免疫組織学的な検討では萎縮の進行の程度とは相関を認めていない。今後、定量性に優れるWestern blot法を併用することによって、またその下流のbeta-cateninを調べることにより、胃粘膜萎縮の進行と発癌のリスクを定量的、経時的に検討していく予定である。
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