樹状細胞と肝癌細胞の融合細胞を用いた新たな癌免疫療法開発のための基礎的検討を行うことが、本研究の目的である。本年度は、樹状細胞と肝癌細胞の融合細胞を用い、in vitroにおいて肝癌細胞特異的細胞障害性T細胞の誘導が可能か否かをマウスを用いて検討し、以下の結果を得た。 1.BALB/cから得た樹状細胞と同系肝癌細胞c-BNLの融合細胞と、BALB/c由来末梢血リンパ球をin vitroにおいて混合培養すると、B細胞の著名な増加がみられ、培養上清中にはc-BNLに対する抗体が認められた。また、培養上清中にIL-4、IL-5等のTh2サイトカインは同定されなかった。一方、T細胞の増殖はみられず、c-BNL特異的CTLの誘導もみられなかった。 2.C57BL/6から得た樹状細胞と同系肝癌細胞MC38の融合細胞と、C57BL/6由来末梢血リンパ球をin vitroにおいて混合培養すると、T細胞の著名な増加がみられ、MC38特異的CTLの誘導も認められた。しかし、培養上清中にIL-2、IFN-γ等のTh1サイトカインは同定されなかった。また、B細胞の増殖やMC38特異的抗体の産生もみられなかった。 以上より、遺伝学的背景により融合細胞によるリンパ球刺激作用が異なることが示された。
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