自発呼吸下でのイヌの気管支の収縮活動を気管支バルーンを用いて測定すると、その変化は胸腔内圧に強く影響されていました。しかし、詳細に検討すると、呼気終末に胸腔内圧に対抗した気管支の収縮が認められました。 この収縮をより詳細に検討するため、人工心肺を用いた体外循環を導入しました。体外循環下で筋弛緩薬により非動化し、呼吸による胸腔内圧の変動を消失させます。これにより、胸腔内圧の影響を受けていない気管支の収縮活動を記録することが出来ました。この記録では、気管支の収縮活動は、横隔神経活動と同期して認められました。胸腔内の影響を受けない場合、気管支の収縮は、横隔神経活動の吸気相中期から始まり、呼気相に最大値をとっていました。このことは、気管支収縮が呼吸調節の中でも呼気調節に関与している可能性を示しています。 次に、人工肺に二酸化炭素を負荷し、高二酸化炭素血症を生じさせると、横隔神経活動の頻度が増加し、振幅も増大しました。この時、気管支の収縮活動も横隔神経活動と同様に頻度が増加し、収縮が増強していました。この気管支収縮の強さと横隔神経活動の振幅の最大値の相関を調べたところ、直線性の有意な相関を示していました。このことから、気管支の収縮活動は、横隔神経活動と同様に、呼吸中枢から収縮の頻度、強さを調節されていると考えられました。
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