ケモカイン受容体は、HIVなどのウイルス感染や免疫反応のメディエイターとしての役割で注目されており、中枢神経系での発現に対しても興味がもたれている。今回はケモカイン受容体の中でも、特にHIV感染との関係の深いCXCR4、CCR5についてミクログリアでの発現を中心に検討を行なった。 CXCR4、CCR5の発現は、サンプルよりmRNAを抽出し、逆転写反応を行なった後、それぞれのケモカインに特異的なプライマーを作成してPCR反応を行ない、アガロースゲル上に展開して目的とするcDNA産物を、内部標準物質としてβアクチンと比較し半定量的に検討することで行なった。 対象サンプルとしては、まずHIVの中枢神経内での主要な感染細胞とされるミクログリアを用いた。ミクログリアを従来の方法によりマウスから分離培養し、無刺激での定常状態のほか、各種サイトカイン、リポ多糖、薬物を培養液中に加え24時間刺激を行なった後サンプルとして用いた。 定常状態においては、CXCR4、CCR5ともに発現がみられた。サイトカインによる刺激ではTNFαによりCCR5の発現が減少した。CXCR4は各種サイトカインでは減少はみられず、リポ多糖で減少がみられ、これはリポ多糖の量を増加させると発現がまったくみられなくなった。薬剤としては、免疫抑制剤を中心として検討したが、サイクロスポリンに対してはCXCR4、CCR5ともに影響はみられなかったが、FK506の投与によりCCR5の発現は抑制された。 これらの結果からミクログリアの定常状態でのCXCR4、CCR5の発現、およびこれらケモカイン受容体の発現をを減少させる可能性のある刺激物質が存在することが判明した。
|