常染色体劣性遺伝形式の家族性パーキンソン病(AR-JP)の原因遺伝子であるParkinの機能の解明のために大腸菌を用いてヒトParkinタンパク質をHis-tagをつけた融合タンパクとして発現させこれを精製した。これまで、Parkinタンパクは不安定で大部分が精製途中の段階で分解していたが条件を検討した結果、単離に成功した。このタンパクでマススペクトルによるペプチドマッピングを行ったところC末端、N末端のどちらも保存されており、分解されていない全長のParkinタンパクが得られたことがわかった。これを用いてモチーフ解析により予測された数種のプロテインキナーゼによる^<32>Pラベルリン酸化実験を行ったところParkinのリン酸化が認められた。これはParkinタンパクのリン酸化予測部位が変異した患者が確認されていることから興味深い結果である。現在このリン酸化部位が患者で変異している部位と同じ部位かを同定するためにマススペクトルによる解析を行っている。 これからの展開としては以下のことを予定している。Parkinが可逆的なリン酸化により制御されている場合、特異的なプロテインホスファターゼが存在する。従って予想されるいくつかのホスファターゼを用い、in vitroでリン酸化Parkinを基質とするか検討する。リン酸化部位を同定したのち、よりin vivoに近い神経系の培養細胞を用いて細胞内のリン酸化状態、分化の過程でのリン酸化状態の差異、ホスファターゼ阻害剤存在下でのリン酸化の亢進等の解析をする。またparkin、リン酸化Parkinをもちいたウェストウェスタンブロッテイング法により会合タンパクの探索をおこないリン酸化との関連を検討する。
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