動脈硬化性疾患の危険因子の一つとして脚光を浴びている内臓脂肪型肥満に対するエストロゲンの関与を解明するために、エストロゲンが脂肪組織の分布と内臓脂肪からの動脈硬化促進因子分泌に及ぼす影響をラット卵巣摘出モデルを用いてin vivoで検討した。また、エストロゲンが脂肪細胞の分化、増殖、機能に与える作用をprimary cultureを用いて検討した。 1.ラットを用いたエストロゲンの脂肪分布に対する影響の検討 8週齢のWistar ratに対し、卵巣摘出手術を施行し、12週齢からエストロゲン投与群と非投与群に分けて、16週齢の時点で内臓脂肪、皮下脂肪を採取し定量を行なった。実験ではエストロゲンは中枢の食欲に対する影響があるため、食事の量を一定として検討し、エストロゲンが内臓脂肪の量を抑制することを確認した。また、エストロゲンの作用が脂肪組織のエストロゲン受容体を介しているか否かを検討するため、エストロゲン投与群をさらに2分し、一方にはエストロゲン受容体の拮抗剤であるtamoxifenを投与し、内臓脂肪の量に与える影響を検討している。 2.天井培養法による内臓脂肪細胞と皮下脂肪細胞の培養系の確立 ラットの脂肪を内臓脂肪と皮下脂肪に分け、phenol redを抜いたDMEM培養液を用い、さらに血清中の性ホルモン様物質の影響を除外するためにCharcoal dextran処理を行ったウシ血清を用いて培養を行ない、天井培養法での培養系を確立した。
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