本研究課題では、雑種成犬のQT延長症候群モデル(LQTS)を用い、心室内の興奮伝搬と不応期の分布を三次元的にマッピングして以下の初期結果を得た。 1、独自の針電極で心室を貫壁性にマッピングすると、LQT2モデル・LQT3モデルいずれにおいても心筋中層(Mcell領域)の不応期が心内膜側と心外膜側よりも長く、貫壁性に不応期の不均一分布が認められた。 2、高頻度刺激を加えると心室局所でQT/T交代現象が観察されたが、この変化は体表面心電図記録には必ずしも反映されなかった。 3、ニコランジルはMcell領域の不応期をより短縮させることで、貫壁性の不応期の不均一性を改善させたが、この効果はLQT3モデルよりもLQT2モデルで顕著であった。 4、メキシレチンも心室貫壁性の不応期の不均一性を改善させたが、この効果はLQT2モデルよりもLQT3モデルで顕著であった。メキシレチンの不応期短縮効果はニコランジルよりも大の傾向が認められた。 5、ペーシング周期を短縮させた時の不応期の不均一性改善効果はLQT3モデルでより著明で、LQT3症例でのペーシング療法の有用性が示唆された。 6、LQT2モデル・LQT3モデルともに星状神経節刺敷によって心室性不整脈が誘発された。星状神経節刺敷による不整脈発症には、Focal Activityの誘発、T波交代現象の出現、貫壁性不応期分布の不均一性増大、局所の伝導促進が関与していた。メキシレチンは星状神経節刺激による不整脈発症を抑制したが、ニコランジルの効果は部分的であった。
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