本年度はα-glucosidase阻害剤、N-methyl-1-deoxynojirimycinについて、その心筋梗塞サイズ縮小効果がprotein kinase CやK_<ATP> channel阻害剤で消失するか否かを検討した。ウサギを対象に30分間coronary occlusion48時間reperfusionのモデルを作製しその梗塞サイズを調べた。N-methyl-1-deoxynojirimycin(100mg/kg)は虚血開始10分前に、protein kinase Cのブロッカーであるchelerythrineは虚血開始20分前に、またK_<ATP> channelのブロッカーであるglibenclamideは虚血開始60分前に静脈投与した。N-methyl-1-deoxynojirimycinによる心筋梗塞縮小効果は、chelerythrineの前投与により完全にブロックされたが、glibenclamideではブロックされなかった。chelerythrineやglibenclamide単独では、心筋梗塞サイズに影響を及ぼさなかった。さらに虚血中の糖代謝について調べたところ、chelerythrineをN-methyl-1-deoxynojirimycinの前に投与した心臓においても、N-methyl-1-deoxynojirimycinによる、グリコーゲン分解と乳酸蓄積の抑制が保持されていることがわかった。すなわち、α-glucosidaseによる、心筋梗塞縮小効果のメカニズムとして、嫌気性糖代謝の抑制は直接的なmediatorではなくその下流でprotein kinase Cが関与していると推測される。
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