本年度はin vitro培養心筋細胞及び、in vivo心筋梗塞モデルを用い、アポトーシス細胞の表面抗原の変化及び、ケモカイン産生を検討した。 I)in vitro培養心筋細胞での検討 〈方法〉 新生仔ラット培養心室筋細胞に、staurosporinを4時間添加し、アポトーシスを誘導した。Hoe33258染色にてアポトーシスを評価した。細胞表面抗原の検索として、抗主要組織適合抗原(MHC)classII抗体染色を行い、ケモカイン産生を評価する目的で、抗IL-8抗体による免疫染色を行った。 〈結果〉 staurosporin投与により16.9±2.8%の心筋細胞にアポトーシスが誘導された。表面抗原の検討においては、staurosporin投与で、MHC classII染色陽性細胞が増加する傾向にあった。また、ケモカイン産生に関しては、Hoe33258とIL8の二重染色を行ったが、アポトーシス細胞にIL8産生は認めなかった。 II) in vivo心筋梗塞モデルでの検討。 〈方法〉 ラット左冠動脈を30分結紮後24時間再灌流し、再灌流後の心臓を組織学的検討に供した。心筋アポトーシスはTUNEL染色にて検討した。また、アポトーシス細胞のケモカイン産生能を検討するため、抗IL8抗体、抗MCP1抗体で免疫染色を行った。 〈結果〉 心筋梗塞壊死巣周辺部にアポトーシス細胞を19.4±0.9%認めた。抗IL8抗体染色は、浸潤細胞に陽性を認めたのみであった。一方、抗MCP1抗体染色は単球、血管平滑筋細胞、及び梗塞周辺部心筋細胞において陽性であり、TUNELとの二重染色において、TUNEL陽性細胞の55.8±3.9%の心筋細胞がMCP1染色陽性であった。 昨年度、同様の心筋梗塞モデルで梗塞周辺領域においてMHC classII抗原の発現を報告している。以上の結果より、心筋アポトーシスにおいて、MHC classII抗原の発現により膜表面の抗原性に変化を来たし、かつ、MCP1産生により細胞除去を受けやすい条件を提供している可能性が考えられた。
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