研究概要 |
(目的) 心筋分化において,心筋特異的遺伝子発現と共に心筋特異的選択的RNAスプライシング(心筋特異的スプライシング)は重要である。心筋細胞において、ミトコンドリアATP合成酵素γサブユニット(F_1γ)、MEF2Aなどの心筋特異的スプライシングが認められる。研究者は、骨格筋分化において、F_1γ、筋特異的転写調節因子MEF2AおよびMEF2D、構造蛋白のβ-tropomyosinおよびNCAMの心筋特異的スプライシングが筋特異的転写調節因子MyoDによって協調的に誘導される事を見い出した。本研究では,心筋分化において、これらの心筋特異的スプライシングを支配している因子は何であるか検討した。 (研究実績) 平成11年度の研究において、心筋特異的転写調節因子Nkx2.5(CsX)のみの一過性発現だけでは、マウス線維芽細胞10T1/2細胞において、F_1γの心筋特異的スプライシングは認められなかった。骨格筋分化系において心筋特異的スプライシングの誘導にはMyoDの発現と共に、無血清刺激、もしくは酸性刺激が必要である。そこで、平成12年度の研究では、10T1/2細胞にCsxを発現させその後無血清刺激、酸性刺激を加えてF_1γのスプライシングのパターンを検討したが、心筋特異的スプライシングは認められなかった。 心筋細胞分化には、CsX以外の転写因子(BNP,MEF2C,GATA4,dHAND,eHAND等)が関与しており、そのメカニズムは複雑である。心筋特異的スプライシングはCsX単独では起こらず、Csxと他の転写因子との協調作用もしくは他の転写因子の役割が考えられる。今後、これら転写因子の関係を検討していきたい。
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