酵素ヘムオキシジェネース(HO)は、ヘムを代謝して一酸化窒素(NO)に類似のガス状物質である一酸化炭素(CO)を産生する。我々は、COがNO同様に平滑筋の弛緩を介して循環調整に寄与していること、そして、血管系のHO/CO糸は、NOS/NO系と相補的で、アンギオテンシン系と拮抗的関係にある可能性を報告してきた。しかし、HOが血管平滑筋細胞及び血管内皮細胞での発現が報告されているものの、産生されたCOが血管系のどの部位に作用しているのかは不明である。我々は、特に、血管平滑筋をもたない毛細血管での血流調節とHO/CO系の関与を検討した。現在、CCDカメラを使用し、精巣挙筋や大腿筋群等骨格筋のラット細動脈と毛細血管系を、また腸間膜動脈を直視下で視察するシステムを組上げつつあり、HO誘導薬もしくはCOを毛細血管へ潅流したときに発生する血管系の変化のデータが得られつつある。NO同様にCOの血管内での発生は血流のずり応力により変化する可能性が高いため、現在微小血管内血流速度の測定を現システムを使用して模索中であるが、まだ目標には至っていない。陰茎海綿体平滑筋は、特にNOを介して、神経因子により、また血管因子により弛緩(勃起)する。我々は、毛細血管系のCOによる拡張反応を観察中、陰茎海綿体部位での細血管の拡張を認めた。よって、勃起反応にも、特に血管因子の一つとしてCOが関与している可能性が示唆されたため、同時に検討をすすめた。その結果、勃起反応へのCO成分の寄与が証明でき、HO/CO系の障害が高血圧症に起因する勃起障害の大さな原因となっていた。詳細は、平成12年度循環器学会などで発表する予定である。今後、骨格筋を中心に、拡張収縮能を持たないとされてきた毛細血管の血管運動能とそれへのHO/CO系の関与、更には高血圧症におけるそれらの異常を報告できると確信している。
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