本研究ではヒト拡張型心筋症における自己免疫機序の関与を検討するために、最終的に心筋ミオシン特異的T細胞クローンの同定を試みることを計画した。計画実施の前段階として継続検索を行っていたラット自己免疫性心筋炎モデルからのT細胞株樹立の手法確立についてであるが、従来諸家の報告していた通り原因は不明であるがwhole myosinの抗原形では培養での増殖を図れないと最終的に結論付けた。そこで、これまでに報告のある心筋ミオシン内心筋炎惹起ペプチドに注目しこれを人工的に作成することにより、ペプチド特異的T細胞株の樹立を目指すこととした。その結果心筋炎惹起能を有するCM2(1539-1555)特異的CD4陽性T細胞株(サイトカイン産生でIFN-γ産生能を有しTh1タイプと判定)の樹立に成功した。さらにはbulk culture細胞株を段階希釈法を用いて細胞株をクローン化することが可能であることも判明した。 このようなT細胞株樹立の様々な方法論を確立したことを踏まえ、現在ヒト拡張型心筋症の末梢血検体を用いエピトープ人工ペプチドや心筋ミオシン切断混合物を用いたT細胞株樹立の可能性について検討を進めている。さらには、同一患者の心筋生検標本での浸潤T細胞のcharacterizationを進めている。これらの検索を進めることで、ミオシン関連T細胞が拡張型心筋症発症の病態形成に関与している事実を比較証明できると考えられ、現在両検索を進めている。
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