本邦において、慢性心房細動は有病率が高く、脳血管障害を合併する危険性の高い不整脈である。薬物による心房細動予防法の確立は重要な研究課題である。心房細動が遷延すると心房筋は変性し、心房筋細胞膜における一部のイオン電流が減少することが報告された。しかし、これらのイオン電流を修飾する作用をもつ抗不整脈薬が、心房細動により変性した心房筋に及ぼす影響については未だ報告されていない。そこで我々はイヌ心房高頻度刺激モデルを用いて抗不整脈薬が心房筋の電気生理学的指標に及ぼす効果を経時的に検討した。 まず、IKr遮断薬であるE-4031が心房有効不応期、心房内伝導速度、興奮波長に及ぼす影響を高頻度刺激開始後2週間にわたり経時的に検討した。その結果1)E-4031の有効不応期延長効果は心房高頻度刺激後も保たれていたが、短い刺激周期ではその効果は減少した(逆頻度依存性効果)。2)E-4031は心房高頻度刺激後の心房内伝導速度には影響を及ぼさなかった。3)E-4031の興奮波長延長効果は心房高頻度刺激後も保たれていたが、短い刺激周期ではその効果は減少した。以下の研究成果を1999年の北米心臓ペーシング学会(NASPE)において報告した。 次にIKs遮断薬であるazimilideが心房筋の電気生理学的に及ぼす効果を経時的に検討した。その結果1)azimilideの有効不応期延長効果は心房高頻度刺激後も保たれ、短い刺激周期においてもその効果は減少しなかった。2)azimilideは心房高頻度刺激後の心房内伝導速度には影響を及ぼさなかった。3)azimilideの興奮波長延長効果は心房高頻度刺激後も保たれ、短い刺激周期においてもその効果は減少しなかった。以上の研究成果を2000年の日本循環器病学会において報告した。 さらにINa遮断薬であるpilsicainideが心房筋の電気生理学的指標に及ぼす効果を経時的に検討した。その研究成果を2000年の北米心臓ペーシング学会(NASPE)において報告する予定である。
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