研究目的 糖尿病心筋でのpreconditioning効果の評価と、近年新たに発見されたpH調節機構であるVascular Proton ATPaseの関与についての検討を行うため、本年度は本実験系での糖尿病心筋でのpreconditioning効果について検討した。 方法 1.実験モデル Sprque Dawley系ラットを用いSyreptozotocin静注にて糖尿病を作成、生食静注群を対照とした。 2.灌流法 Pentobalbital麻酔下で心臓を摘出後、HEPES buffer Tyrode溶液を用いLangendorff法で灌流した。 3.preconditioning効果の検討 虚血再灌流は各15分の10% low flow後再灌流を行った。preconditioningは3分間の短時間虚血を3回反復した。血行動態は左室内にラテックスバルーン挿入にて左室圧を測定、心表面にカーボン電極を装置し心電図を測定した。細胞内Ca濃度は蛍光指示薬Fura2AM(4nM)を経動脈的に負荷し、340/380nMの励起光を当て蛍光強度比によりCa transientを測定した。細胞内H濃度は同様にBCECFAM(2nM)負荷後、450/500nMの励起光の蛍光強度比によりpHを測定した。 4.結果、結論 虚血再灌流モデルでは、糖尿病群において細胞内Ca上昇軽減、細胞内acidosisの軽減及び再灌流後の血行動態(rate pressure product)保持がみられた。preconditioningにより、再灌流後の血行動態保持はより増強された。今後preconditioningによる細胞内Ca細胞内asidosisの変化を測定後、Vascular Proton ATPaseの阻害剤であるVafilomycin投与下での各項目を検討していく予定である。
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