研究概要 |
本研究の目的は、心筋細胞における細胞周期の制御機構を明らかにし、細胞分裂再開による心筋細胞再生という形での心不全の新しい治療法の可能性を検討することである。 そのために、細胞周期制御蛋白であるcdk2,cdc2の心筋細胞特異的トランスジェニック・マウスを作製し、それらの心臓を解析することにより、心筋細胞における細胞周期制御機構を明らかにし、心筋細胞再生の可能性につき検討を加えることを目的として研究した。 cdc2の心筋細胞特異的トランスジェニック・マウスが正常に発生、生育するのに対して、cdk2の心筋細胞特異的トランスジェニック・マウスは心肥大が認められたが、個々の心筋細胞のサイズはむしろ小さく、細胞分裂が亢進している結果と考えられた。cdk2の心筋細胞特異的トランスジェニック・マウスでは心不全を合併し、発現の多いラインは死亡した。 cdk2,cdc2の心筋細胞特異的トランスジェニック・マウスで、このような差異が生じるメカニズムは明らかではないが、DNA、RNAレベルでは問題ないが、蛋白レベルで生成されていないことが明らかになった。Post-transcriptionalな制御がなされている可能性が考えられた。 今回の解析により、心筋細胞における細胞周期制御機構の一部を明らかにし、心筋細胞再生の可能性につき検討を加えることができたと考える。
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