(1)コンピュータシミュレーション 心筋細胞を最も反映すると考えられているLuo-Rudyモデルを用いて、数万から数100万個のユニットからなる心房筋を想定した二次元配列モデルを作成した。電気刺激により持続性の細動興奮波を誘発し、スーパーコンピュータを使ってシミュレーションを行った。心房細動の基本は単一のリエントリー(mother reentry)であり、それがmeandering(さまよい)現象をおこすことによって成立しており、一過性にbreakup(自己分裂)現象やnew wave front の発生を伴うことで典型的な細動興奮が引き起こされていた。その停止は主としてmeanderingする興奮波とエッジとの衝突によって生ずるか、あるいはbreakupした二つの興奮波間での衝突で生じていた。 (2)実験的マッピング解析 ミュレーション解析で得られたデータは我々の心房細動の停止機序に関する仮説(心房細動の停止は興奮波間の衝突によって生ずる)に矛盾しなかった。そのため、現在、犬の孤立心房筋を使って実験的に心房細動中の興奮伝播を評価している。実験には非常に高度な技術を要するため、評価し得るだけの例数をこなしていないが、心房細動の維持には単一のリエントリーのみならず、複数の興奮波が関与することは明らかとなりつつある。今後、複数の興奮波がリエントリーによるものかを検討し、さらに停止時の興奮パターンを評価する予定である。また、心房細動の誘発が全くできなかった犬あるため、心房細動の誘発性を高めるため、acetylcholineをTyrode液に付加することを検討している。以上が現在進行中の実験の概要である。
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