心血管病の新しい危険因子として注目されている高ホモシステイン(Hcy)血症において血管内皮機能異常がみられる。しかし、それが原因か単なる付随現象か、その機序については明らかではないことから、Hcyの基質であるメチオニン(Met)を負荷することにより、健常者において血中Hcy濃度を上昇させこれが血管内皮機能に如何なる影響を及ぼすか、その変化に再メチル化によりHcyを低下させる葉酸補充がどのような影響をもたらすか検討した。若年健常男性に対し、Met又はMet+葉酸を経口投与し、経時的に血中Hcy濃度を測定し、同時に、血管内皮機能を反応性充血時の上腕動脈の血流依存性血管拡張反応により評価した。Met負荷により血中Hcy濃度は8時間後に約4倍に上昇し24時間後には正常に復した。Hcyの血中濃度の変化と鏡像的に血管内皮機能は前から8時間後には1/2程度に減少し24時間後には回復した。葉酸の同時投与はMetによる血中Hcy濃度の上昇に影響を与えなかったが、血管内皮機能低下を著明に改善させた。この葉酸によるHcy非依存性の内皮機能改善機序を明らかにするために、酸化ストレスの指標として血中MDAとoxLDLを、in vitroで葉酸による再活性化が報告されているNO合成酵素必須の補酵素BH4を測定した。Met前後で前者は不変であり、血中BH4の有意な上昇が見られた。即ち、Met負荷によりもたらされた内因性Hcy血中濃度上昇はダイナミックに血管内皮機能を変動させ、葉酸の同時投与は血中Hcy非依存性に(恐らくBH4の再活性化による内皮由来NO放出を介して)Metによる内皮機能異常を改善させた。
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