内皮依存性血管弛緩反応と血小板由来NO放出量が相関するか否か、さらには血小板を用いて冠危険因子保因者におけるNO放出能低下の機序について検討した。計24例の症例にて血管内皮依存性血管拡張反応と血小板由来NO放出能について検討した。アセチルコリン動注によるヒト大腿動脈の血管内皮依存性血管拡張反応およびADPによる血小板由来NO放出能はいずれも有意冠動脈狭窄の存在、糖尿病の存在にて有意に低下していた。また血管内皮依存性血管拡張反応と同一個体の血小板由来NO放出能は有意な正の相関関係を示した。ニトログリセリン動注による血管内皮非依存性血管拡張反応と血小板由来NO放出能は相関しなかった。また、血小板内のcGMPも血管内皮依存性血管拡張反応と有意相関を示し、血管内皮非依存性血管拡張反応とは相関しなかった。以上のことから内皮型NO合成酵素の障害は血管内皮のみでなく血小板にも起こっているものと推定された。さらにNO放出能の低下の機序を解明するために20例にて血小板NO合成酵素のタンパク量をウエスタンブロットで酵素活性をRIで測定したがいずれも血小板由来NO放出能とは有意な相関関係は認められなかった。また、細胞内酸化還元状態の指標として20例にて血小板内のグルタチオン濃度およびパーオキシナイトレートも測定したが血小板由来NO放出能との相関関係は認められなかった。総括すると今回の本研究にて血管内皮と血小板のNO放出能は相関することが明らかになった。今回の検討ではNO放出能の低下の原因として一酸化窒素合成酵素の酵素活性やタンパク量、細胞内酸化ストレスの亢進は否定的であったがさらに対象例を増加させての検討が必要である。
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